長年にわたりキャンパス外周に設置されていた職員組合の掲示ボードが京大法人によって一方的に撤去された問題について、職員組合はこの措置が違法であることを根拠に、京都市と京大法人に対し2021年4月に損害賠償請求訴訟を提起するとともに、その裁判費用を集めるクラウドファンディングを3月末に開始することを決めました。広く社会に問題を知ってもらい、支援をお願いするため、3月25日に記者会見を行いました。会見には、クラウドファンディングのプロジェクト代表である髙山佳奈子副委員長と、副代表の駒込武中央執行委員、栗山敦書記、弁護団から京大法科大学院出身の寺本憲治弁護士と高木野衣弁護士が臨みました。
2017年に京都市屋外広告物条例を理由に京都市が京都大学法人に対して、キャンパス外周の掲示物(タテカン)を規制するよう指導を強めました。これを受けて京大法人は年末にかけて立看板規程を制定しましたが、そこでは公認学生団体が一定の条件の下で指定場所に許可なく立看板を出してよいことが定められるのみで、労働組合に同じ地位を認める規定はありませんでした。そのため職員組合は、同規程は組合には適用されず、組合の掲示ボードは従来どおり労使の了解に基づいて掲示できるものと考えていました。
ところが大学法人は2018年5月に、話合いや意見聴取の機会を全く組合に与えることなく、一方的にすべての掲示ボードを撤去しました。 職員組合はこのような措置は労働法上違法であると考え、団体交渉を求めましたが、大学法人は京都市の指導によると繰り返すのみで、撤去の法的根拠を明らかにせず、しかも毎回違うことを言いました。職員組合は京都市にも複数回にわたって説明を求めましたが、京都市は、特定の掲示物を撤去するように京大法人に指示したことはないとし、しかも聞く度に回答内容が変わりました。
そもそも京都市条例は、歴史的建造物の景観を損なう商業広告の規制を主眼として作られたものであり、労働組合などの非営利活動には許可を得ずに掲示物を出すことのできる余地を広く認めています。また、掲示ボード単体は条例の基準にも適合したものでした。それにもかかわらず京大法人が問答無用でこれまでの労使慣行を反古にしたことは大変残念です。
しかも、京都市条例自体にも大きな問題があります。掲示できる広告物の面積の上限を、外周の長さにかかわらず「1区画」あたり一律に定めているため、周辺の区画に比べ圧倒的に大きな京都大学の外周に対して、極端に差別的な扱いをしているのです。表現の自由を規制するためには、規制によって守るべき重要な価値(公共の福祉)がなければなりませんが、京大の場合、タテカンを撤去することによって守られる景観はありません。逆に、数十年にわたり形成されてきたタテカン文化こそが、京都大学の歴史的景観として保護されるべき価値なのです。かつての学生の中には、タテカンのある風景や折田先生像などが体現する自由な雰囲気に憧れて京大を志望した方も少なくないでしょう。また、京都を訪れる観光客の方々にとっても、タテカンは京大の名物だったはずです。しかし現在、キャンパス前には、学生のタテカンどころか学会や公開シンポジウムの看板すら全く出せなくなっています。
職員組合は、裁判のためのクラウドファンディングやカンパへのご協力を広く呼びかけるものですが、学生アルバイトも含め京大職員の地位を持つ方からは、職組へのご加入が最も大きなご支援になります。まだ組合員でない方には、ぜひこの機会にご加入をお願いいたします。
裁判やクラウドファンディングの最新情報は、京大職組のウェブサイトやSNSで随時発信しますので、どなたもご注目くださいますと幸いです。
クラウドファンディングプロジェクト代表・副委員長 髙山 佳奈子
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