日 時:2016年5月20日(金)昼休み
会 場:京都大学職員組合 事務所会議室講義題:「メンタルヘルスから見た現代の危機」講 師:富田 直秀 教授(工学研究科教授)
収録映像:https://youtu.be/h5U7cT_vq1s (YouTube)
講義概要: 10年以上前から、新入生へのオリエンテーションでメンタルヘルスに関するスピーチを担当してきました。当初は、精神医学の基礎知識などを基盤にした注意事項を話していたのですが、スピーチ後に相談に訪れた学生や研究者たちとの交流から、現代の危うさを強く感じるようになってきました。相談に来る学生の変化に危うさを感じるのではありません、異常状態、つまり悪循環に接したときの我々研究者や社会の態度に強い危機感を感じ続けています。
学問分野においては、従来の「最適化」のみならず、ヒューマンエラー、非線形現象、臨床、リスクコミュニケーションといった多様性に関連する事象に対して、認識論的、存在論的な考察まで交えて議論されるようになってきました。けれども、厳密性と歴史性を重視する学問のフィールドにおいて、その記述はとても難解で、その内容を実感として捉えて、ヒトや社会を対象にした実践に生かすことのできるスキルには未だ至っていないようです。講演では、絵や図などの可視化を用いて、多様性の生じる原理、正常・異常の概念、そうして現代科学がいかに「主体」と関わっているかを、可及的平易に述べてみたいと思います。そうして、「最適化」や「傾向と対策」を基盤とした問題解決法が人を追い詰めた結果として、今では「異常」自体が大きく変化している可能性を主張したいと思います。
講師略歴:富田直秀(とみた・なおひで)
1955年生。
早稲田大学理工学部、同理工学研究科博士課程前期を経て、1981年、
佐賀医科大学医学部医学科入学。学生兼整形外科研究員として生体材
料研究に従事し、1987年、同卒業(医師国家試験 合格)、奈良県立
医科大学整形外科学教室入室,国立奈良病院等での整形外科臨床を経
て,1994年、京都大学生体医療工学研究センター医用システム工学分
野 助教授(分野長)平成10年 再生医科学研究所に改組)
2002年、京都大学国際融合創造センター創造部門(生体・医療工
学),教授
2008年、京都大学工学研究科医療工学分野、教授現在に至る。
研究領域・テーマは、生体材料学、再生医療工学、デザイン学。妻
の医療事故を契機として、学会活動とは別に、ヒトや社会に関わるデ
ザイン活動を続けている。
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